創業ストーリー

サイバーリーフ【創業ストーリー】 ~大麻狂騒曲 アメリカ交渉・厚生労働省編③~

2021年10月8日

Cyber Leaf 大麻狂騒曲

Cyber Leaf ~アメリカ交渉・厚生労働省編~

次の日の朝、私は荷物をまとめチェックアウトの手続きを済ませていると、ホテルのロビーに杉山君が合流した。

杉山君「社長、お疲れ様です」

私「お疲れ様―、ひさしぶりに日本語で話すと落ち着くな」

杉山君「ほんとにラスベガスからここまで、車できたんですかwww疲れたでしょう?」

私「まーね、でも楽しかったよw」

杉山君「うわっ、車の足回り泥だらけじゃないですか」

私「本当だ、気づかなかった、悪路も走ったからな…、先に洗車場に行こう、まだ時間はあるんだろ?」

杉山君「まだ、時間はありますよ、せっかくだから少し市内を回ってみますか?」

私たちは車に乗り込み、デンバー市内を車で回った。

シカゴとサンフランシスコのほぼ中間に位置するコロラド州は、全米に先駆けて2014年1月から娯楽用大麻を合法化した州として注目される事になる。

街を挙げて大麻政策に取り掛かっているため、州内には1500を超える大麻ショップがあると言われている。

車を運転すると、車窓からは緑十字を掲げた大麻販売店の看板が目に飛び込んでくる、個人店のような小さな店から、大型のチェーン店までが立ち並ぶ。

 

私「それにしても、すごい数の大麻ショップだな、まるで日本のコンビニみたいだ」

杉山君「コロラド州は特にすごいですよ、旅行者向けの大麻ツアーなんてのも人気があるみたいですよ」

私「へー、それは興味深いないな、どんなツアーなの?」

杉山君「私も詳しく知りませんが、大麻を吸って、大麻畑や製造工程を見学、大麻の料理を食べて楽しむ、みたいな感じだと思いますよ」

私「日本のビール工場見学みたいなノリだな」

杉山君「まさにそれですww」

 

デンバー周辺では合法化の影響か、住宅価格が全国平均をはるかに上回る伸び率で高騰しており、記録的な高額の家賃水準となる、コロラド州の大麻消費の約10%は旅行者や州外からの観光者からと言われており、観光地として州の財政を支えていた。

 

杉山君「あそこのスタンドに洗車場があります、よりましょうか?」

私たちはガソリンを入れ、洗車した後、併設されているコンビニによった。

お菓子の棚にはCBDのグミやお菓子が並んでいた。

 

私「やっぱり、コンビニにも置いてあるんだ」

杉山君「最近、増えましたね、特にCBDは人気があります」

私「THC(日本では違法成分)がOKの州でも、やっぱりCBD
は人気があるんだ」

杉山君「THCは取りすぎると酩酊するので、それを嫌う人は多いですよ」

アメリカでは州によってTHCが違法の州もあるので、THCフリーの製品が多い。

 

杉山君「そろそろ待ち合わせの場所に向かいましょうか?」

私「そうだね、遅れても嫌だしな、近くの会社なの?」

杉山君「打合せ場所は、車で少しいった所のコーヒーショップです」

私「えっ、会社行けないの?」

杉山君「今回はコーヒーショップみたいですね、まー、我々の素性も名乗ってないですからね」

私「やっぱり、警戒されてるのかな?」

杉山君「そういう訳ではないと思いますが、まずは詳しく話を聞いてからという事じゃないですか?コロナの影響もあるのかもしれませんね」

 

私は少し不安に感じながら、打合せ先ののコーヒーショップに向かった。

 

コーヒーショップにつき、杉山君が電話をかけると、先方は先に待っていた。

ディランと名乗る男性は、スラっとした体形で、まだ若いイケメン風の好青年だった。

 

ディラン「こんにちは、会えてうれしいよ、さー座ってくれ、何か飲むかい?」

私たちはディランと握手を交わして、テーブルに着いた。

 

私「じゃあ、コーヒーをお願いします」

 

ディランはウエイトレスにコーヒー2つ頼んでくれた。

 

ディラン「最近はコロナの影響で、ミーティングでこのショップをよく利用するんだ、ここのサンドイッチは絶品だよ!」

ディランは軽快なリズムで話し出した。

 

ディラン「私は毎朝、この店のサンドイッチを買って出社するんだ、ここの野菜は朝採れたてのモノを使っているから最高だよ!」

私「それはいいね、我々も帰りに買って帰ろう!」

ディラン「さて、君たちのビジネスプランを教えてくれないか?」

 

意外だったのは、国籍を聞かれなかった事だ、どう見てもアジア人で、私は片言の英語しか話せない。

最初の段階で日本人である事が知られ、交渉が難航する事を予想していたが…、

初対面でむやみに相手の事に触れないのは、アメリカのマナーのようだ。

 

私「いま、うちの会社でCBD関連の製品開発を行っているんだ」

ディラン「それはいいね、どんな製品なんだい?」

私「リキッドやオイル・化粧品・お菓子等、総合的にプロデュースする予定だ」

ディラン「うちはOEMもやってるよ、そうするとパンフレットを取り出した」

私「いや、うちは独自に開発したいんだ、だから君の会社の原料に興味がある」

ディラン「独自開発かそいつはクールだな、原料ならまかせてくれ!うちの会社は全米トップクラスの品質だ」

ディラン「原料の品質は、生育・抽出・保管で決まる、うちはどれも最高レベルだ、きっと素晴らしい製品が作れるよ」

 

私は事前に調べていたのでディランの説明している事は知っていた

 

私「それは素晴らしいな、是非、採用したい」

ディラン「CBD以外にも色々と種類があるんだ、どれにする?」

私「それじゃ、数種類の原料を購入するよ、キロ単位での取引でも大丈夫?」

ディラン「OK問題ない、この商品は即納できるよ、どこに配送するんだい?」

 

私はだまし討ちしているようで、嫌な気分になったが意を決して言った。

 

私「じゃー、日本に配送をお願いできるかい?」

ディラン「日本??? NOこの製品は日本には配送できない」

 

ディランは急に困惑した表情になった。

 

私「なぜ日本には配送できないんだい?この製品にはTHCは入ってないだろ?THCは日本では違法だがCBDは問題ない」

ディラン「この製品は日本向けの製品じゃないんだよ」

私「ディラン、私は君に会うために日本からやってきた。なぜ日本に配送できないのか教えてくれないか?」

ディラン「・・・・」

私「正直に言うと、君の会社に以前メールで商談したいと連絡したんだけど返事が来なかったんだよ、他の会社でも似たような状況だ」

ディラン「そりゃそうさ、日本からのメールは既読されず、ゴミ箱いきさ…」

私「なぜだ?」

ディラン「日本には厳しい独自ルールがある、それをクリアすのが大変だからさ…」

 

やはりか…、アメリカの企業がメールを無視する理由はうすうすわかっていた、

 

私「日本でTHCは違法だ、それ以外の大麻成分は基本的にOKだ、君の会社にはTHCフリーの製品も多くあるじゃないか、何が問題なんだい?」

 

ディラン「確かに、当社の製品にTHCが含まれていない製品は多くある、だが問題はそこじゃない、日本には成分以外にもクリアしないといきない項目があるだろう?」

日本には大麻取締法という法律があり、たとえ違法成分が入っていない製品でも厳しく制限されていた。

 

CBD製品を輸入する場合、下記のルールに従う必要がある。

・大麻草の成熟した茎又は種子以外の部位(葉、花穂、枝、根等)から抽出・製造され た CBD 製品は、「大麻」に該当します。

・なお、大麻草から抽出・製造されたかを問わず、大麻草由来の成分であるテトラヒ ドロカンナビノール(THC)を含有する CBD 製品は、「大麻」に該当し

ないことが確認できないので、原則として輸入できません。

また、化学合成された THC は麻薬及び向精神薬取締法で「麻薬」として規制されていますので、原則として輸入できません。

※「大麻」の輸入は、大麻研究者が厚生労働大臣の許可を受けた場合にのみ可能です。また 「麻薬」の輸入は、麻薬輸入業者が厚生労働大臣の許可を受けて輸入する場合等のみ可能 です。

・「大麻」に該当する CBD 製品を輸出入、所持、譲渡、譲受した場合は罰せられる可能 性があります。

・化学的に合成された CBD は規制対象とされていませんが、輸入に当たっては「大麻」 でないことの確認を求められる場合があります。

「厚生労働省 麻薬取締部より引用」

 

製品として輸入する場合、要約すると下記2点が問題となる。

  • THCが一切含まれていない事。
  • 成熟した大麻草の茎・種のみを使用して作られた製品。

特に部位規制は国際的に異例とも言える、厳しいルールだ。

それだけではない、これはあくまで違法性のない製品への前提条件であり、実際に輸入する場合、証明書・成分分析書・宣誓書・製造工程書・及び原料の写真、さらに直筆のサインや記述内容の整合性チェックに至るまで細かい資料を提出する必要がある。

そして、これはあくまで厚生労働省の麻薬取締課に提出する書類だ、さらに税関への資料提出・厚生労働省の食品監視課・薬事法関連として近畿厚生局への確認等が必要となる。

 

「一番の問題はその資料を外国企業が用意する必要があるという事だ」

自身で揃えるのであれば、努力次第でどうにかなる、しかし、相手に資料を作らすとなれば、話は違う。

外国企業側からすれば、取引経験もない相手の為に、相手国のルールに沿った形式の資料を用意し、さらにそのルールに従って製品作りしなくてはならない。

その厳しすぎる制約が日本への輸入を困難なモノにしていた。

 

ディラン「THCフリーの製品を作るのは問題ない、だが、成熟した大麻草の茎と種のみから、製品を作るというのは大変だ」

私「日本向けの製品として、別ロットで製品作りを行う事はできないかい?」

ディラン「それも不可能に近い…、いいかい、私たちは1つの製品を製造する場合、一度に数百キロ、時には数千キロ単位で製造を行う、君はいったい何キロ単位で注文するつもりだい?」

私「・・・」

初期ロットとして数キロを考えていた私は、答える事ができなかった。

それを、察してかディランは続けた。

 

ディラン「もちろん、君のロットが少ないというわけではない、数十グラムから取引する事もある、だが、それはあくまでスタンダードな製品だからだ」

私「いったい何キロ単位なら取引できるんだ?」

ディランはその質問に答えず、こう続けた。

ディラン「成熟した大麻を分別して、さらに葉とバッズ(花穂)をカットする、通常こんな工程はない、それ専用に人員を用意する必要がある、もちろんそこには費用が発生する、アメリカ人は日本人ほど勤勉ではないんでね」

 

さらにディランはこう続けた。

ディラン「そして出来上がった製品をすぐそのまま流通はできない、行政への届け出、分析調査・重金属検査・農薬検査等の手続きが必要となる、もちろんそれらにも費用が発生する」

私「・・・」

ディラン「そして、これが一番重要な事なんだが…、気を悪くしないでくれよ、アメリカのメーカーは日本市場に魅力を感じていない」

これに関しては、ある意味しかたのない事だ。

私の予想では日本のCBD製品における市場規模は50億円以下、部位規制の撤廃の話もあるが、大麻使用罪の創設等、メガディブな要素もあり、将来の見通しは良いとは言えない状況だった。

 

一方アメリカでは、2020年大麻の市場規模は2兆円、さらに2026年には10兆円以上に成長するというから驚きだ。

アメリカは国として大麻は違法という立場だが、アメリカ人の66%が大麻解禁に賛成しているというデータもあり、年々その声は上がっている、連邦法として大麻が解禁されるのは時間の問題のようにも思える、もし大麻が全面的に解禁されると今は様子見をしている大企業が参入し、10兆円という市場規模は現実味をおびる。

 

彼らからすると、日本は金にならない上に独自の厳しいルールがあり、まったく利益にならない、やっかいな市場という事なのだ。

 

私「ディラン、確かに日本の市場はまだ小さい…、厳しいルールがあるのも事実だ、だが、日本も少しずつだが変わろうとしている」

ディラン「・・・」

 

私「アメリカで生活する君には信じられないかもしれないが、日本人は大麻に関して非常にセンシティブで路上で大麻と口にするだけで通報されかねない社会だ、そんな中、大麻に関して運動している活動家や法律家・医師・起業家は大変な努力をしている、そして信念のある人間ばかりだ、今後、日本の状況は必ずよくなる。」

 

ディランはパンフレットを片付けながらこう話した。

ディラン「・・・・、すまない、次の約束があるんだ」

 

やはりダメか・・・、帰り支度を済ませるディランに私は強い口調でこう続けた。

 

私「まだ終わってないぞディラン、私の話を聞くんだ。確かに日本の市場は小さい、君たちが軽く見るのも理解できる、日本は世界でもまれにみる高齢者大国だ、それに極度のストレス社会でもある、これが意味する事は君にはわかるだろう」

痛みを和らげる効果があるCBDは高齢者と非常に相性の良い製品で、アメリカにおいても高齢者の割合が年々増加していた。

 

私「それに日本の人口は1憶二千万人以上、GDPは世界三位の超大国だ、まだ少ないがアメリカやヨーロッパ・中国の企業も参入してきている、さっきもいったが日本の状況は必ず好転する。

だが、もしその時に日本に興味を持っても、もう手遅れだぞディラン、日本市場を軽視した企業にその席は無いぞ…」

 

ディランは私を睨むようにじっと見た…

私「君の知っての通り、日本には独特なルールや商習慣さらには言語の壁があり外国企業単独での市場参入は極めて困難だ。

だが今なら、私を通して君はそのノウハウを学ぶ事ができる、しかも利益を確定させながらだ、君は優秀なビジネスマンだろう、本当にこのチャンスを逃していいのか?」

 

ディランは小さくゆっくりと何度かうなずいた。

 

ディラン「OK、君の言っている事のほうが正しい、どうやら私も考えを改める必要があるようだ、ただ、私もチームを説得する必要がある、少し時間をくれないか?」

 

私「わかった、どのくらい待てばいい?」

 

ディラン「3日ほど必要だ、それともう1つ、さっきも言ったが君の会社専用の生産ラインを作る必要がある、それに人員も必要だ、もちろん価格は上がる」

私「どのくらいになるんだい?」

ディラン「計算してみないとまだわからない、最低でも3倍以上の価格を覚悟してくれ」

私「わかった、それでいい」

 

最後にディランと握手して、店を出た。

 

杉山君「社長お疲れ様です、しかし3倍の価格は少し厳しいですよ…」

 

私「まーな、とにかくディランの回答を待ってみよう、やってくれるのかも、わからないからな…」

 

杉山「そうですね、でもよく説得できましたね、見事でしたw」

 

私「一度、NOというアメリカ人を説得してみたかったんだ、映画みたいで楽しかったよ、それに、やられっぱなしじゃ気分悪いだろw」

 

その後、デンバーの街を散策して次の日に空港に向かった。

 

帰国して、すぐにディランから私に直接メールが届いた、内容は見積もりに関してだ、いつも思うが見積もりを見る瞬間は緊張する。

私は意を決してPDFを開いた、そこには驚きの金額が記載されていた。

ディランからは、価格は3~5倍以上になると言われたが、実際の見積もり金額は通常価格の1.25倍だった、私はすぐにディランとZOOMで話した。

 

私「こんにちはディラン、先日は打合せありがとう」

ディラン「こんにちは、無事に帰れたかい?」

私「コロナなので日本に帰ってもしばらく家で働いてるよ、また、アメリカの国立公園でドライブしたいよw」

ディラン「私も週末にハイキングに行く事があるよ、最高だね」

 

私「そうそう、見積もりを見せて貰ったよ、君と契約したいので話を進めてくれ」

ディラン「そう言うと思って、もう進めてるよ、先に小ロットで試して、書類を用意するよ」

私「ありがとう、一つ質問してもいいかい?君は価格が3~5倍になると言っていたが、こんな安い金額で本当にいいのかい?」

ディラン「あー問題ない、スタッフミーティングで小ロットであれば追加に人を雇う事なく、空いた時間でやってくれるそうだ。それに、わざわざ地球の反対側からきた友人を手ぶらで帰すわけにはにかないだろ?」

私「本当かい?ミーティングの時に帰ろうとしてなかったかい?」

ディラン「いや・・・・・・、君を試そうとしたんだww」

ディランはごまかし笑いをしながら最後にこう言った。

ディラン「今回の件もあって、うちの会社でもこれからアジア市場に積極的に投資する事が決定したんだ。日本はこれから大きな市場になるんだろ?これは先行投資だよ、また遊びに来てくれ。今度は大麻農園を案内するよw」

私「そうか…、ありがとうディラン、スタッフにも感謝を伝えてくれ」

 

いつの時代もアメリカ・ヨーロッパを震源地に新しい文化がはじまり、やがてアジアに波及する。

どの分野でもこの流れが一般的だ、そして大麻も例外ではないと思える瞬間だった。

なにはともあれ、アメリカでも最高品質と言われる原料が確保でき、私はホッとしていた。

色々な事があったが、捨てる神あれば拾う神ありと言った所だ。

数日後、ディランから提出する資料が届いたので、早速メールを送信した、宛先は「関東信越 厚生局麻薬取締部」

 

すぐに自動返信メールが届いた、内容は、「審査に2か月近くの時間がかかります」との事だった…。

 

私「2か月か…結構長いな、まあしかたない…、」

 

ディランに審査に2か月が必要と伝え、サイト制作や製品開発に注力していた、そして1カ月半後ついに、厚生局麻薬取締部からメールが届く。

メールの内容は「輸入申請却下」の知らせだった…。

 

その内容は書類の不備による、申請却下だった。

~申請却下の理由①~

〇成分分析資料はLOQではなくLODで提出してください。

簡単に説明すると、THC(違法成分)を含まない製品である事を証明する分析書類をLOQ(定量下限値)ではなくLOD(検出限界)で提出してくれとの事だった。

ディランに説明して、新しい分析書類を作成して、一週間後に厚生局に提出した。

厚生局から3日後にメールが来たが又しても、申請却下だった。

 

~申請却下の理由②~

〇書類に会社の責任者又は管理責任者の直筆サインが必要です。

ディランに説明して、書類の作成をやり直してもらい再度、提出した。

次こそは大丈夫だろうと思っていたが、3日後、再度申請却下のメールが届いた。

 

~申請却下の理由③~

〇申請書類の文書の整合性相違という内容だった。

よくわからないので、詳しく教えてくれと厚生局に連絡した所、回答があった。

書類に「成熟した大麻の茎から製品を作る」という文言がわかりにくいので変更してくれとの事。

変更内容は「大麻の茎を成熟させて製品を作る」だった…。

 

これが一番大変だった、日本語での訂正なら、そのまま記載すればいい、だが、これはすべて英文の話だ。

 

ディランに何度説明しても、

ディラン「それじゃあよくわからない、文章の内容は一緒だよ、どこに違いがあるんだい、もっと詳しく教えてくれ。」

 

私「…すまない、私もよくわからないんだ…」

 

とりあえず、英文法をいじくって提出するが再度却下される。

書類の修正はもちろん、アメリカの企業が行う、これ以上手間をかけさせるわけにはいかない…。

私は厚生局にメールした「すみません、文章の整合性ですが、具体的な訂正内容を教えて頂けますか?私も英語で相手に説明しないといけないので、どう伝えたらいいかわからず困っています」

1週間後に厚生局から連絡がきて、具体的な英文を教えてもらい、ディランに修正を依頼した。

私はこれでやっと輸入ができると、色々な準備を進めていたが、3日後にまたしても、申請却下の連絡が入った。

 

~申請却下の理由④~

以前、提出された工程表には大麻の種の写真が載っていたが、書類には大麻の茎で製造されたと記載されています、正しくはどちらですか?

 

この内容は場合によって(製品に種も使用しているケース)はすべての資料を作り直す必要があるので、ディランに質問するときに緊張したが、種は使用していないとの事なので、画像消去で完了した。

ディランはここまで、文句のひとつも付けなかったが、私は正直うんざりしていた。

このやりとりを1カ月以上続けているからだ、もちろん、資料を提出できない私が悪いのだが…。

 

 

2021年7月、私はいつものように池の周りを散歩していた、暑くなってきたのでマスクにはうんざりしていた。そんななか、突然1本の電話がかかってきた。

 

「厚生局麻薬取締部の〇×です、今、お電話大丈夫ですか?」

 

私「えっ、はい大丈夫です。」

厚生局麻薬取締部からの突然の電話に、少しドキドキした。

 

担当者「えー、CBD製品の輸入手続きをされてますよね?」

 

私「はい」

 

担当者「私が担当しております、〇×です」

 

私「あっ、お世話になっております、いつも訂正続きで申し訳ありません、ご迷惑をお掛けしております」

 

担当者「いえ、いえ、こちらも仕事なので大丈夫です」

 

CBD界隈では悪く言われてる厚生労働省だが、なかなか丁寧な口調の好青年だった。

 

担当者「この度、正式に輸入許可がおりましたので、そのお知らせと最終確認です」

 

私は心の中で飛び跳ねるぐらいの喜んだ、ここまでくるのに、いったいいくつの困難を乗り越えたか…。

私は喜びを抑えながら話を続けた。

 

私「そうですか、ありがとうございます。」

 

担当者「税関でストップした場合、税関の担当者に私の名前と日付をお伝え下さい、私から説明します」

 

私「はい、わかりました」

 

担当者「それと、今回の確認はあくまで、書類上に不備がないかの確認であって、輸入される製品の合法性を保証するモノではありません、もし輸入後に、違法成分が含まれていた場合、返送等は行われず焼却処分となります」

 

私「・・・、はい」

 

これは、輸入する際の大きなリスクである、もちろん違法物質が無い事はアメリカ側でも分析して確認しているが、税関の検査でひっかかった場合、その時点で終わりだ。

THCが少しでも入っていた場合、焼却処分される。

返送もされないのでもちろん返金もされない、数百万円単位で注文した場合、一瞬でそのお金は焼却される事になる。

これをヘッジする方法はなるべく少量で頼む事だが、日本向けの製品はそれも難しい。

 

担当者「それでは、最終の確認となります。」

 

私「はい」

 

最後に厚生労働省麻薬取締課の担当者から厳しい口調でこう言われた・・・・。

 

担当者「今回、輸入を行う製品は大麻取締法に抵触する恐れのある製品です、営利目的での違反行為を犯した者は、10年以下の懲役に処し、又は、情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する事になります」

 

私「・・・・。」

 

担当者「また、違法成分が見つかった場合、製品名及び会社名また責任者の名前を厚生労働省及びその他の機関において公表する事があります、そういったリスクもご理解した上で、それでもこちらの製品の輸入を行いますか?」

 

私は、まるで判決をいいわたされる容疑者のような気分になってしまい、思わずもう一度考え直しますと言いそうになったが、こう答えるしかなかった。

 

私「はい、お願いします・・・・・。」

 

 

~あとがき~

創業ストーリーを簡単に書く予定だったが、少し長くなってしまった。

大麻事業を行う上で、サイバーリーフではいくつかのトラブルが発生した。

 

CBD製品を取り扱うという事での世間の目。

原料を仕入れる際のメーカーとの交渉。

日本の大麻取締法の壁とリスク。

 

もちろん、すべての会社がこのような道をたどるとは限らない。

新興企業であればCBDを取り扱う事での世間の目は少ないかもしれない。

原料を日本国内で調達すれば、メーカーとの交渉や厚生労働省とのやりとりも必要ない。

当社は幸か不幸か、大麻事業の問題点に数多く直面してしまった、そのおかげか、日本が抱える様々な大麻の問題と向き合う必要があった。

 

大麻狂騒曲というテーマで創業ストーリーを描いたが、大麻を取り扱うと騒がしいという事はなく、どんどん孤立していく。

人に話しても中々理解されないので、そのうち話すのを止めてしまう、それによって大麻の情報が遮断されてしまう。

そしてわからないという事は恐怖につながる、それは合法であるCBDでも同じだ。

大麻事業は前も見えない草原をかき分けて進んでいるような感じだ、みんなよくわかっていない、それでも進み続ける、そして進んだ後には道ができている。

私自身、先人たちが進んだ道のおかげで助かった事が何度もある。

私がかき分けて進んだ道も、いつか誰かが通っていく事になるかもしれない・・・・

そうして闇雲に進んでいく道の先に、大麻という植物の未知なる可能性が広がっている事を願う。

 

最後に長々と書かれた創業ストーリーを最後まで読んでくれた方々に感謝致します。

 

 

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